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居酒屋

酒の勢い。
そう言えば許される、その時はそう思ってポロリと溢した言葉が、言ってしまってから所謂やってしまったと言う状態だった。


目の前で揺れる睫毛の奥の瞳がうろたえた。
自分の口から音のような意味の持たない言葉が宙を舞う。
居酒屋の一角、オレンジ色に落とされた照明が酒の注がれているグラスに反射してキラキラと光っていて、それはここの雰囲気とは一切合わないものだった。

「……忘れてください。」

絞り出した声は余りに小さく聞こえたかどうかなど考えず酒を煽った。
かたん、と言うグラスを置く音だけが響く。相手からの反応はなく不安を増長させた。

異性ではない目の前の相手はどうみても成人した良い歳の男だった。
会社の関係で知り合い、同じ趣味ということで、話に花が咲きよく飲む友達だった。
栗色のショートヘアの前髪から覗く少し歳にしては幼く感じる目は長い睫毛に縁取られている。
綺麗だなと思った時には、知らない感情に肩まで浸かり抜け出せなかった。
伝える気も更々無かったのに。

嫌われた。

スッと前に影が落ちる。殴られるだろうかと思ったがその影は頭に少しの衝撃を与えて離れた。
くしゃくしゃにされた頭を触りながら前をみると、困り顔の彼が笑っていた。



「……気持ち、嬉しいぞ。」




目の前が海に沈んだように滲み、見えなくなった。



(貴方はズルい。抜けられない)
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